野口英世博士の墓前に献花する 日米医師会代表の面々 2019年9月22日

左から 日本医師会 能登裕二国際課長、HNMS 加納良雄副代表、JMSA ロバート柳澤会長、HNMS 本間俊一代表、 日本医師会 横倉義武会長、日本医師会 星北斗副会長、ウッドローン墓地 ジェームス・ローランド副会長

1.ニューヨーク野口英世記念会の発足とその背景:

ニューヨーク野口英世記念会(NewYork Hideyo Noguchi Memorial Society,Inc.(HNMS)=本部:ニューヨーク市)は、日本が生んだ国際的細菌学者である野口英世博士の功績をたたえ、志を後世に伝え、その墓碑を守り、さらに医師を目指す青少年の育成と応援を目的に、米国日本人医師会を母体とした税控除非営利団体NPO 501(c)(3)として2013年に発足しました。

野口博士は、1876年11月9日、福島県猪苗代町に生まれました。20歳で医学の道に進み、さらなる研究のため渡米したのは1900年です。まずペンシルベニア大学の研究助手となり、のちにニューヨークのロックフェラー医学研究所(現ロックフェラー大学)に移籍しました。何度となくノーベル賞の候補となり、イエール大学、東京帝国大学他多くの学術機関から名誉学位が授与されましたが、1928年5月21日、黄熱病ワクチン開発のために訪れていた西アフリカのラゴスで、その黄熱病に罹患してなくなりました。

死後、博士の亡骸は、ロックフェラー医学研究所が米国政府から特別認可を受けたチャーター船によってニューヨークに運ばれ、同研究所が博士のために購入したNYブロンクスウッドローン墓地の一角に埋葬されました。シンプルな玉石に「科学への献身を通じ、人類のために生き,人類のために死せり」と刻まれた青銅版がはめ込まれた墓碑のもとに、後に並んで埋葬された最愛のメアリー夫人とともに今も博士は静かに眠っています。法定伝染病である黄熱病による博士の遺体の国外搬送は、法律で厳しく禁じらていたこともあり、博士の遺体がウッドローン墓地にのみ葬られているという事実は、日本人の間でも殆ど知られていません。

しかし長い年月の間、特別の手入れや清掃などが施されぬまま墓碑の劣化が進み、墓石は風雪と汚れによって朽ち果てた状態に陥っていました、この姿に心を痛めた米国日本人医師会の有志が中心となって集めた4,000ドルが投入され、実に没後80年ぶりとなる大がかりな修復作業を経て、2008年11月15日、晴れてその除幕式が行われました。

この墓碑修復事業が契機となり、修復事業に参加した者が中心となって参加を募り、2013年にニューヨーク野口英世記念会が発足しました。そして、2008年以降毎年野口博士の命日に墓前会を行ってまいりました。2017年5月21日は、野口博士の90回忌に当たり、墓前祭も10回目の節目を迎えました。そこでニューヨーク野口英世記念会は、この節目の年に当たり、野口博士の遺徳をたたえる新たな事業を計画したいと考えた次第です。

ウッドローン墓地には、世界的ジャズミュージシャンのマイルス・デービスやデユーク・エリントン又ピューリッツァー賞で知られる世界的ジャーナリスト、ジョセフ・ピューリツァーなど多くの歴史的偉人が眠っていますが、その中でも、特に2008年の除幕式以降、野口英世博士の墓碑は、最も来訪者の多い場所のひとつとして知られるようになり、毎年多くの人がこの偉大な博士の墓所を訪れ、功績を偲び、その遺徳をたたえています。

2.ニューヨーク野口英世記念会の目標と活動綱領:

主な活動の目標は、次の2つです。

(1)ニューヨーク在住の日系・日本人の手によって責任をもって野口英世の墓を守り、手入れを施し、博士の偉業と遺徳を長く後世に伝えてまいります。

(2)米国で医師を目指す青少年、特に日本人の若き研究者を応援し、彼らが将来、野口博士が歩んだ同じ日米の懸け橋となれるよう、その育成と支援に努めます。

この2つの目標及びその活動の進め方について、以下、少し具体的に補足説明いたします。

(1)について

1)ニューヨーク野口英世記念会(以下、「記念会」)の下に、ボランティア組織「野口英世の墓守る会」(小委員会)=(以下、「守る会」)を設置します。この構成は、記念会のメンバーの他、広くボランティアを募り、

  1. ボランティアによる季節ごとの定期的な墓所の清掃、点検、管理
  2. 毎年5月21日の命日に行われる墓前祭の行事計画、広報、実施、点検、管理。
  3. 有効な広報手段としてのチラシ、ポスター、ブロッシュアなどの作成・配布及び他の告知、啓蒙などPR及びマーケティング活動の積極的立案と展開。

などを中心に、積極的に且つ責任をもって活動を推進してまいります。

2)これらの作業目標を円滑に遂行または実施すべく、記念会として、ウッドローン墓地、ロックフェラー大学、地元各報道機関(メディア)、米国日本人医師会、在ニューヨーク日本国総領事館、福島県猪苗代の公益財団法人野口英世記念会などと緊密な連携を保ち、適宜、適切な指導を仰ぎつつ、幅広い相互理解と協力体制のもと活動が円滑に遂行できるよう万全の対策を講じます。

(2)について

米国で勉学に励む日本人の若き研究者(Researcher)に対し、2018年からの実施を目標に「ニューヨーク野口英世記念医学奨学金」を創設します。

1)この対象は、米国で勉強する若き日本人研究者(Researcher)とし、毎年4月又は5月にニューヨークで開催される恒例の「米国日本人医師会年次晩餐会」(JMSA Annual Spring Dinner)又は「野口英世墓前祭」の席で発表と授与式を執り行ないます。

2)奨学金の金額は、毎年受賞者1名乃至3名程度とし、一人当たりの授賞金額は、諸般の状況又は条件を考慮しつつ、その都度、適切な額とします。(初年度:1名)

3)応募地域:原則として日本及び米国全土。応募条件に適合すれば、その他の地域からの応募も有効とします。

4)応募の時期及び締め切り:詳細は別途定めます。

以上の目標を円滑の達成するため、記念会は、常に、次の諸点に留意いたします。

  • 米国日本人医師会(JMSA)との緊密な連携及び共同企画の推進と実施
  • 交益財団法人野口英世記念会(本部:福島県猪苗代町)との緊密な連携及び報告
  • ウッドローン墓地及びロックフェラー大学との緊密な連携と協力
  • 独自のウェブサイトの立ち上げと内容の充実及びJMSAウェブサイトとのリンク
  • 記念会と共通の活動理念又は精神を有する米国における他の団体、組織との積極的な連携、情報交換、共同企画の推進と実践。

3.上記の活動目標を達成するために必要な資金獲得は、本記念会発足の経緯に鑑みて今や喫緊の課題であると感じております。本年5月、本記念会の活動を広め、ご支援及びご寄付をお願いするため、「ニューヨーク野口英世記念会 日本部会」(以下:「日本支部」)を設立いたしました。またこのたび、日本での銀行口座が、下記の通り開設されました。

銀行名:三菱東京UFJ銀行八重洲通
支店店番:022 口座番号:0493210
口座名:「ニューヨーク野口英世記念会日本支部会」
(本項目:2017年6月30日追加挿入)

4.私たちは10年前、野口英世の墓碑修復事業を行って以来、毎年5月21日の命日にささやかな墓前祭を行ってまいりました。偉大な先人野口英世は、すべての日本人にとって「心のよりどころ」ともいえる存在ではないでしょうか。しかし博士の墓がニューヨークにしかないという事実は、日本人の間でも殆ど知られていませんでした。私たちは、米国在住の日本人としてまずこの事実をできるだけ多くの日本人に広め、博士の墓を守り、その功績と遺徳を後世に伝え、医学の道を志す若き日本人研究者を応援するために何かを興したいという使命と責任感を今強く感しています。これは米国にいようと日本にいようとすべての日本人にとって共通の思いであると確信しています。

最後に、ニューヨーク野口英世記念会発足の経緯と現地における日本人ボランティアの活動に、何分のご理解を賜り、博士の生まれ故郷である福島県を初め、広く日本各地からも「野口英世墓守る会1000円募金」(仮称)といった募金の呼びかけを含むご支援・ご協力の手を、また皆さんからの温かいご寄付を賜りますよう、心から、伏してお願い申し上げます。

2017年1月吉日

ニューヨーク野口英世記念会
New York Hideyo Noguchi Memorial Society, Inc. (HNMS)
代表 本間 俊一
副代表 加納 良雄